営業マンが実践する効果的な話し方とは
営業トークは、営業力を高めるために必要不可欠なスキルです。数多くの職種の中で、とりわけ営業職はコミュニケーション能力や交渉術が求められます。そこで今回は営業マンが実践する話し方をご紹介します。
話すスピードや声の大きさを相手に合わせる
お客様を惹きつけるコツとして、まず話すスピードや声の大きさが挙げられます。ゆっくり話す相手に対してはゆっくりと話しましょう。
とはいえ、早口の相手に早口で話すのが一概に良いとは限りません。
対面営業・電話ともに敬遠されやすい営業こそが、早口な営業トークとされているからです。
商品やサービスがいくら魅力的であっても、ずっと早口で話されると聞き手は疲れてしまいます。相手が理解する間もなく話が進むことで、気持ちが萎えるだけでなく、意見を言いたくても言えないかもしれません。
一方、ゆっくり過ぎる話し方も問題です。
お客様は忙しい中合間をぬって時間をつくっています。中には次の用事を控えている可能性もあるため、相手の表情をみながら適度なスピードで話すことを意識しましょう。
声の大きさも重要なポイントです。聞き取れないくらいの声の小ささで話すのは、印象がダウンします。
受注率の低下にもつながりますし、電話での営業であれば、途中で切られかねません。明確かつはっきりと話せるよう練習しましょう。
声の大きさが適切でも、同じボリュームで話していると、相手は退屈になるものです。
聞き手が同じことを聞き返したり、つまらなそうな態度が目立ったりする場合は、同じペースで話が続いていることが原因かもしれません。
相手に聞いて欲しい重要な箇所はゆっくりめに話し、逆にさらっと聞いて欲しい箇所は少し早めに話すなどして、テンポを変えましょう。
抑揚や音の高低差をつける
営業を成功させるポイントには、やはり「声」が欠かせません。大きさはもとより、抑揚や声の高さも重要です。
高低差のない話し方は単調に聞こえるため、聞き手は重要な話がどこか分からず飽きてしまい、内容を聞き流すかもしれません。
一方、抑揚がつくとアップダウンの道を歩いている感覚となり、飽きることなく話を聞きとれます。
抑揚のつけ方として挙げられるのが、文頭と文末に高低差をつける方法です。
文頭は高めにし、文末にいくにつれ低い声で話しましょう。重要なポイントや強調したい箇所では、高いトーンで意識して話すことも重要です。
ここで気をつけるべき点は、声の大きさではなく、あくまで高さに着目することです。聞いて欲しい箇所で急に声を大きくすると、聞き手は驚いてしまいます。
また、声の高さも営業トークを高めるうえで大切なポイント。
2人きりで対面で話す場合と、6~8名ほどの人数でMTGを行うケース、そして30名以上を集めたセミナー会場では、それぞれ声の高さを変えたほうが望ましいとされています。
音階でいうと「ミ」・「ファ」・「ソ」に着目してください。
まず、対面で適しているのが「ミ」の音です。自分に向けて話していることを相手が理解しやすい音といわれています。
会議室でMTGを行う際は「ファ」の音に意識しましょう。2人のときよりも少し音を高くするのがポイントです。
一番高い「ソ」は、セミナーで話す声に適した音階です。自分が思うよりも少し高めの音で、かつ遠くに声を飛ばすイメージで話しましょう。
抑揚や声の高低さは、大きさと同様、すぐに身につくものではありません。
営業で話す内容をまとめ、その原稿で強調したい箇所にあらかじめマークをつけて、高いトーンで話せるよう練習しましょう。抑揚を意識することで、感情が宿った文章が生まれ、あらゆる場面で生き生きした印象を相手に与えられます。
適度な「間」を取る
スピードと抑揚を意識しても、話題を切ることなく長時間話すと、相手が疲れてしまうものです。
聞き手がスムーズに話の内容を理解し、次の話題に移る準備をしてもらうよう、話し手は適度な間を設定します。
基本、話し手は営業で話す内容を事前に練習し、熟知しています。
聞き手となるお客様には、事前に商品・サービスの情報をお伝えしている場合もあるかもしれませんが、話のこと細かな内容は営業マンが直接伝えるものです。
今は対面営業だけでなく、オンライン営業も増えてきました。
オンラインでは特に音声の聞き取りやすさが要となり、一人が話す時間が対面に比べて長くなります。音声が聞き取りづらいと相手は一気に集中が切れるので注意したいものです。
間には「引きつけの間」と「理解の間」の2種類があります。
「引きつけの間」の時間は1秒から3秒ぐらいとし、特に聞いて欲しい言葉の1秒前、前後に1秒ずつに間を入れましょう。このちょっとした間があることで、聞き手は自然かつスムーズに話に集中できます。
かのスティーブ・ジョブズ氏は、iPhone発表のプレゼンにて、7秒間沈黙し、聞き手の注目を集めたそうです。話を聞いて欲しいときはあえて一瞬の沈黙を入れると、聞き手の興味を惹きつけられます。
「理解の間」は、文と文との間に取るものです。
ひと通り話を終え、違う話題に入る際に使います。3~5秒と、引きつけの間よりも若干長いのが特徴です。必ず頭の中でカウントしてください。
特にセミナーのような大人数を相手に話す場合、この3秒間がとても長く感じるといわれています。3秒がどれくらいの感覚か、ストップウォッチで体感してみましょう。
相手の考えに共感をしながら話す
営業トークが上手い営業マンほど、相手は心を開きやすいものです。
好感度が高く、安心感を得られ、かつ信頼ができる人ほど、お客様の話をよく聞き、受け入れます。相手が気持ち良く話ができるよう、相手の考えに共感しながら話しましょう。
具体的に意識する内容としては、認める・褒める・感謝する・ねぎらうの4つです。
とりわけすぐにできるのは認めることです。これは相手の言ったことをそのまま返す「バックトラッキング(オウム返し)」といわれるものです。
例えば、相手が「楽しかったんですよ」と言った場合、「楽しかったんですね」と返しましょう。
相手の考えを否定せず、気持ちや思考を受け入れる言葉のため、お客様は、自分を受け入れてくれる・話をちゃんと聞いてくれるという安心感につながります。
このときに控えるべきポイントは、相手が言った言葉を変換して言い直すことです。
お客様が「仕事での挑戦は大切ですよね」と話した場合、営業マンが「そうですね、仕事でのチャレンジは大切ですよね」と言い換えてしまうようなケースです。
さほどその言い回しが気にならないお客様もいらっしゃるかもしれませんが、人によっては、「なんか私が言いたいことと少し違う…」「この人とは微妙に合わないかも…」と距離を感じる可能性があります。
とはいえ、バックトラッキングを多用し過ぎると、お客様は「ちゃんと話聞いている?」と不信感を抱きかねません。話の繰り返しばかりだと会話が進まないため、バックトラッキングは適度に使いましょう。
答えやすい質問で会話をスムーズに進める
営業マンがつらつらと話をしていては、一向に商談が進みません。
商談の成果を上げるには、その場の会話に応じてお客様が答えやすい質問を用意し、会話をスムーズに進めることです。
お客様が抱える課題を抽出し、解決策を提案したうえで、自社の商品・サービスを使ってもらうためには、相手の本音をまず引き出さなければなりません。
そのためには、営業マンは相手が回答しやすい質問を投げかけて、相手が本音で話せる環境を整える必要があります。
一般的に、私たちが投げかける質問は、オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンの2つに分類できます。
前者のオープン・クエスチョンは、質問側が自由に答えられる質問スタイルです。
「以前紹介した医療機器はお気に召しましたか?」「私共の会社のサービスを利用してみていかがでしたか?」のように、相手が自分の気持ちを伝えられるのが大きな特徴です。
一方、クローズド・クエスチョンは、お客様が「YesかNo」で答えられたり、「AかB」といった選択肢から選べる質問を指します。
相手が回答しやすいスタイルで、かつ主導権は質問者側にあるのが特徴です。営業に適しているのが、このスタイルの質問方法とされています。
なぜなら、オープン・クエスチョンの場合、相手が自由に回答できるぶん、会話の流れを予想するのが難しいからです。回答によっては予想だにしていない方向に話が進みかねません。
ですが、クローズド・クエスチョンは、相手の理解や同意を確認しながら商談を進められるため、問題点を洗い出すことができ、かつ計画通りに商談が進められます。
とはいえ、クローズド・クエスチョンは一問一答スタイルで話が途切れやすいので、多用すると取り調べのようになり、質問を受けた側がストレスを感じるかもしれません。
また、「これはこうしたほうが良いと思いますがいかがですか?」のように、質問者側が望む方向に誘導しやすい状態のため、質問を受けた側がその場できちんとした判断ができないまま、回答する可能性があります。
クローズド・クエスチョンが商談に適しているとはいえ、このスタイルを多用し過ぎるのはおすすめできません。オープン・クエスチョンも適度に組み合わせながら、顧客の本音を引き出しましょう。
結論から話す
スムーズに商談を進めるコツとして、結論から話すのも重要なポイントです。
話に集中しやすい冒頭の時点で結論を話すことで、こちらの意図が伝わりやすく、相手の興味を惹きつけることができます。
とりわけオンライン商談では、集中力が続きにくいぶん、要点が見えない会話が続くと、相手を怒らせてしまうかもしれません。当日の商談をスムーズに進めるためにも、資料は事前に送付し、伝えたい情報を共有しましょう。
商談に限らず、報連相を行う際も結論ファーストを意識することで、端的かつ分かりやすい話し方が身につきます。
一番伝えたい内容をきちんと整理してから話せるようになると、時間のロスが省けるだけでなく、気持ち良く会話が進められるでしょう。